とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「…ワタクシは知りませんよ!?」
そう言って去って行く潤の背中に「忍は?」と問いかけた。
「まだです。…良かったですね、帰宅してなくて!」
彼を見送って右京は訝しげに眉を寄せた。
「…意味が解らん…」
まぁいいかと右京は再び木刀を振るう。
ケイの足元で丸くなっていたルークが鈴を鳴らして頭を上げたのが判った。
続いて家の前に車が停まった。
「…忍かな…」
思ったより帰りが遅かったが、無事ならいい…。
右京はホッと安堵の息を溢し、握った木刀の太刀筋に集中する。
が、ドドドドッと地響きのような凄まじい足音に思わず「なんだ!?」と振り返った。