とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~




地を這うような忍の声に完全に逃げ腰になる。



「…なのに、何で道場なんかに連れて来てんのかしら…?」



「い…いやだって、母さん達初詣に行くって言うし…」



「形稽古なんて、いつだって出来るでしょう?」



ガッと木刀をもぎ取られ、右京は思わず「ひぃっ!」と短い悲鳴を上げた。



「こんな寒い所に新生児を寝かせておくなんて…」



「…ま、待て!話せば判る!…な?」



「問答無用!!…覚悟しなさい!!」



木刀を構えた忍は躊躇なく突きを繰り出した。



「おまっ…あぶねぇだろ!?」



「うるさいっ!ケイが風邪引いたらどーするつもり!?」



「まさか引くワケ…」



「無いだろう」と言おうとしたタイミングで道内の隅から、クシュンッ!と小さなくしゃみが聞こえて二人は同時に振り返る。



眉を吊り上げた忍に右京は必死で「違う!」と反論した。



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