とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
右京が灰皿を引き寄せて煙草をくわえると、ガクは自分のジッポでそれに火を付けた。
煙を吐き出す彼にガクは「でもよ…」とカウンターに肘を付いて身を乗り出す。
「お前が一生懸命やろうとしてる事は忍ちゃんだって判ってンじゃねぇか?」
「どーだろ…アイツ、ケイの事になると鬼みたいになるからな~」
「ハハハ!それだけ忍ちゃんもいっぱいいっぱいだって事だよ。まだ二人とも親としては新米なんだ。」
まるで子育てを終えた爺さんのような台詞に右京は思わず吹き出した。
「ガク、説得力ありすぎ!子供いねぇクセに!」
「俺は妹の親代わりだったしな。ある意味先輩だぜ?」
なるほど…と頷きながら右京はビールを流し込む。
「…結婚しねぇのも妹が心配だからか?」
「まぁな。それだけじゃねぇけど。」
「ふ~ん…」
ガクから女の話は聞いたこと無いし、あまり話題にしたがらないのには理由があるのかもしれない。
本人が喋りたがらないのだからと、右京もあえてそれ以上は聞かなかった。