とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
ガクは暇そうにカウンターに寄りかかりながら新聞に目を落としていた。
右京は勝手知ったるAXELの棚からツマミを漁る。
「…奇妙だな…」
ナッツの缶を抱えながら右京はガクを振り返った。
「何が?」
「“事故”だよ。最近この辺りでもあったろ?」
「ああ、一昨日だったか駅前であったな…確か2才の子供だっけ?」
右京が忍にボコボコにされたあの日、彼女が話していた迷子が夜のニュースに出ていたのを思い出す。
「丁度忍がデパートに買い物に行っててさ。“子供が居ない”って叫んでる母親がいたらしい。」
結局その子供はデパートを出て道路に飛び出したらしく、救急車が駆け付けた時には手遅れだったとか…。
忍は自分も近くに居たのに少年を見つけられ無かった事に胸を痛めていたが、こればかりはどうしようもない事だった。