とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「ちょっとトイレ行って来る…」
気分を落ち着ける為に頭を押さえながら近くのトイレに駆け込み、口をすすぐ。
「…大丈夫ですか?」
そう声を掛けられ振り返る。
そこに居たのは宿泊客の若い女性で、しのぶは気まずさを感じた。
「ありがとうございます…大丈夫です!」
「でも…少し休まれたら?」
彼女は自分の肩を支え、廊下のソファに座らせた。
「…顔色良くないですよ?」
「…すみません、でもすぐ良くなりますから…」
力なくそう答えると彼女は「そう?」と心配そうに呟いた。
「…シノブ?」
そう呼ぶ声に二人は同時に顔を上げた。
「あ、右京!」
ソファに座った二人を交互に見て、彼は銀色の長い前髪を揺らした。