とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
その時も目では見ていなかったが、“大型犬のよう”と報告を受けた記憶があった。
必然的にアランは疑問を口にする。
『クー·シーじゃないんじゃないか?…だって猫なんだろう?』
『人間と違って精霊なんかは階級で姿が全く違うんだ。ほら、クドラクやルー·ガルー(人狼)なんかもそうだろう?大型犬並のクー·シーは上の階級だよ。』
言われてみれば確かにその通りである。
右京の話が正しいとすれば、更に疑問が沸き上がる。
『その猫がクー·シーだとして、誰の指示でKの所に来た?まさか自分の意思じゃないだろう?』
アランの問いかけに右京は『それなんだが…』と少し声を潜ませる。
『はっきりしないんだけど、天界のかなり有力な奴みたいなんだ。ルークは言わなかったけどな。』
…ルーク…?
おそらくそれが猫の名前なんだろう。
右京の様子からして、その人物が敵対している者ではなさそうだ。
かと言って安心していて良いのだろうか…。