とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
人間界に長いこと居るが、バージはなかなか慣れない様子で警戒心が強い。
一緒に暮らしているニックですら一定の距離を保ち、最近やっと手を握らせてくれる様になったくらいだ。
『クロウは腹が減ったら来るから!…それよりコーヒー頂戴?』
『はい。』
パタパタとロングスカートを翻してキッチンへ走って行くバージを見てニックは『はぁ…』と肩を落とした。
『“人間にしては─”か…』
ポツリと呟いた言葉にバージは『何か言いましたか?』とキッチンから顔を出した。
『クロウが羨ましいって言ったんだよ!』
『ニックもですか!?私もなんです!』
『えっ?バージが?…なんで?』
トレイにコーヒーを乗せて戻って来た彼女は『だって…』と恥ずかしそうに俯きながらマグカップをニックの前に置いた。