とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
『神が人間界へ降りたそうです。』
『っ!?…遂に始まるのですね…』
『ええ…わたくし達で阻止するのは不可能でしょう。』
ガブリエルは目を伏せ小さく息を吐いた。
“第二次ティタノマキア”…
それが今起きようとしていた。
ハニエルはテーブルの上で組んだ手の平を見つめ、考える。
『…もしかしたら…まだ間に合うかもしれません。』
珍しく厳しい眼差しでガブリエルがハニエルを見つめる。
『…ウリエルと接触するつもりですか?』
『彼はマルバスの監視がありますから、接触するのは難しいでしょう。…頼みの綱は…』
『まさか、赤ん坊を!?無茶です!』
『やるだけの価値はあります。この件、自分に任せて頂けないでしょうか。』
ガブリエルは無言のままジッと彼の目を見据え、やがて諦めたようにため息を溢した。
彼女は決してYESとは言わなかったが、それが承諾しているのだとハニエルは理解した。
彼は『ありがとうございます』と頭を下げると席を立った。
そして、去って行く彼を見て独り言を呟いた。
『まるでウリエルみたい…』
扉が閉まる音が響くと、神殿はまた静寂に包まれた。