とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
写真の子供は幼稚園児くらいだろうか。
内心「うちのケイの方が可愛い」と親バカな感想を浮かべつつ、「可愛いお孫さんですね~」と当たり障りない返事を返す。
「女の子はおませでこないだもね~…─」
まだ話すのかとげんなりする。
忍はこのままでは何時捕まるか判らないと、逃げの体勢に入る為、ベビーカーに手を伸ばした。
が、空振りした事に気付いて視線を向けた。
「えっ…ケイっ!?」
数秒前まで居たはずのケイが居ない。
焦る忍が辺りを見回す。
─…シノブっ!!
ルークの声に忍は顔を上げて道路の方に視線を向けた…その時だった。
─キィィィーー…ッ!!
1ブロック先で急ブレーキを掛ける車の音と悲鳴に、嫌な予感がした。
…う…そ…うそうそ…ッ!
「ケイーーーーーっ!?」
人だかりを掻き分け道路の真ん中で停止している車に駆け寄る。
そこにはベビーカーに乗ったケイが居た。
「あーーーううー!」
「良かった…!!ホントに良かった!!」
ケイを抱き抱えてボロボロと涙を溢す忍に、野次馬は「間一髪だったな!」と声を揃えた。