とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「あ、ありがとうございます!!ホントに…なんとお礼を言ったら…」
「いやいや、俺じゃないよ!そこに居た若い兄ちゃんが…あれ?何処行った?」
「さっきまで居たんだけどねぇ…」
居たはずの青年は居らず、野次馬達は首を傾げる。
ふと、何処からか視線を感じて忍の背筋は凍り付いた。
…なに…?この感覚…
辺りを見回す忍に気付かない野次馬に紛れて「うわぁっ!?なんだこれ!?」と場違いな声が聞こえた。
それは車の運転手らしく、まるで接触したかのように車はボコボコだった。
「まさか、あの兄ちゃんに当たったのか!?」
「まさかそんなはずは…!だって俺が車から出た時はピンピンしてただろ!?」
「そういえばそうだな…」
…一体何があったの…?
それは忍にも、その場に居合わせた誰にも判らなかった。
ただわかったのは、言い様のない冷たい視線が暫く忍に向けられていた事だけだった。