とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
ガブリエルから神が人間界に来たと聞いたとき、オリンポス十二神だろう事は覚悟していた。
だが、無駄にプライドの高い一族だ。
恐らくそれらが全員同時に現れる事は無い。
天使の自分達を介さずに自ら手を下すならそれ相応の力の持ち主…。
『夜なら“アルテミス様”、昼なら“アポロン様”か“アレス様”だ。』
陽はまだ高かった。
ということはアポロンかアレスだ。
…“どうか見つかりませんように…!”
虎太郎は公園のベンチに腰を掛け、目を閉じて千里眼の包囲網を張った。
「…来た…!」
包囲網にケイの気配を感じ、彼は顔を上げ辺りを見渡す。
目の前をヨタヨタと老婦人が通り掛かった。
「おばあちゃん!落とし物だよ。」
そう声を掛けると婦人は「えっ?」と虎太郎を振り返った。
目があった瞬間、虎太郎の瞳が青く光る。
「…ねぇ、おばあちゃん…もう少ししたらベビーカーに乗った赤ん坊が来るんだ…」
彼はお得意の暗示をかけた。
目の前でパチンッ!と指を鳴らすと老婦人はハッと我に返り、虎太郎にお辞儀をして公園を横切って行った。