とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
『もうさ、直接シノブに会いに行ったら?』
悩む虎太郎の隣にちょこんと座ったリサが彼を覗き込んで言った。
『あのね…そんな事したら俺達八つ裂きにされちゃうよ?』
『物騒ね、最近の神って…』
『アイツらは特別なの!』
神の中でもゼウスの一族は王族である。
悪魔紛いの行為ですら“制裁”という言葉に置き換え、顔色ひとつ変えずにやって退けるに違いない。
『にしても…あれは何だったんだろ…』
『あれって?』
『右京の子供だよ!…あの時、何が起きたのか解らない…』
あの歪んだ球体に包まれたに瞬間、身体に電気が走ったような何とも言えない感覚に襲われた。
空気が歪んだと言うより、空間そのものが歪んだような…そんな感覚だった。
『んー…よく解らないけど、まぁ無事だったし、いいんじゃない?』
『ったく、テキトーだなぁ~…』
ニッと笑うリサに虎太郎はそれ以上何も言う気になれなかった。