とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
青白い顔のその男は優雅にソファで足を組み替える。
当たり前の様にくつろぐ様子が物凄く腹立たしい。
『クドラク…不法侵入って言葉を知ってるか?』
『ご心配なく。バンパイアには法律なんて関係無いので。』
『何しに来た。うちに来るなって言ったろ?』
『いいじゃないですか…妻が不在な時くらい。それに…』
クドラクは静かに立ち上がるとゆっくりと忍び寄る。
『…こうやってお話出来るのも最期かもしれませんしね。』
彼は口を開き掛けた右京にしぃー…と細い指先を押し当てた。
『…これは私の独り言ですので聞き流して下さい。』
そう言ってクドラクは右京の前に跪く。
『…私達使い魔にも召集がかかりました。近々地上を激しい戦慄が覆うでしょう。…もう…貴方でも止められない…』
『それは…っ!』
再び『しぃー…』とクドラクは右京の言葉を遮る。