とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
『私は…貴殿が好きでした。…強く真っ直ぐで…そして自由な貴殿が。出来る事ならもう少し……』
クドラクは何かを言いかけて諦めたように顔を背けて立ち上がる。
『神は降臨しました。いずれあの方も機会を見て動くでしょう。…その時…貴殿方“人間”はどうしますか?』
彼は右京にそう言うと徐々にその気配を消していく。
『おい、待てっ!』
『もし…貴殿に止める術があるのなら…力を貸しても良かったんですけどね…』
『クドラク!!』
彼は右京の言葉に応える事はなかった。
─“神は降臨しました…”
彼はそう言った。
右京はクドラクの消えた空間を睨み小さく舌打ちをした。
─“貴殿方人間はどうしますか?”
彼は右京をベルセルクとは言わずに“人間”と称した。
『…やるしかねぇだろ…』
右京は立ち上がると手早く着替え、真っ暗な闇の中へ出掛けて行った。