とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
考えるよりも先に体が動いた。
『リサ!早くこっちへ…!』
『きゃっ…!ヒュー…ッ!?』
物陰まで引っ張られたリサは虎太郎の大きな手で口を塞がれる。
状況の理解出来ない彼女は不思議そうに彼を見上げた。
『…静かに。…アルテミス様の索敵だ…!』
ぼんやりと明るい周囲に警戒しつつ、虎太郎は小さな声で呟く。
『くそ…これじゃあ身動きがとれないっ!』
『一体何処から見てるの!?ヒューガの千里眼は!?』
『駄目だ。使ったら見つかる。』
『でもこのままじゃ、何処かに隠れて朝を待つしか…』
リサの言う通り、動けないのならやり過ごす他無かった。
だが、それでは自分が人間界へ来た意味がない。
『とりあえず隠れましょう?』
『隠れてるだけじゃあ…』
『無意味だ』と言いかけて待てよと思考を巡らせる。
『ここは人間界だ。隠れててもやれる事はある…か。』
『…ヒューガ?』
『おいでリサ。良いことを思い付いたよ。』
そう言ってニッコリ微笑む彼にリサは首を傾げた。