とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
ロイは『ほら、まただ…』とモニターを指差す。
『アクセスが時々却下される…。ファイアウォールは突破してるのに、見えない何かにぶつかってるような…。』
『…言ってる意味が判らないんだが…』
ロイはうーんと唸りながら右京に分かりやすいように言葉を選ぶ。
『例えるなら、ハッキングっつーのはサハラ砂漠に落とした鍵を見つけ出すような作業なんだ。』
ハッカーはそれを探知するプログラムを駆使して探し当てる。
見付け出したら、今度は宝箱を開けるような作業の繰り返しだと言う。
『それが、探し出した鍵を使ってるのに箱自体が錆び付いて開かない…そんな状況だよ。』
『力任せに抉じ開ける事は出来ないのか?』
『出来ない事はないけど、その前にセキュリティに見つかるだろうな。逆探知されてゲームオーバーだ!』
つまり、それ相応のやり方があるらしい。
『ハッキングにも常識っつーか、幾つかのルールがあるんだよ。』
打つ瀬がないと判断したのか、ロイは手を止めて右京を振り返った。