とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
『人によって多少違うかもしれないけど、俺が絶対守っているのは“逃げ道の確保”“完璧な入力”それと“作業の速さ”だ。』
どれを欠いてもハッキングは成功しないと言う。
『時間がかかればそれだけ発見される可能性が高くなるからな。』
ロイは何かを閃いたのか、散乱している引き出しからディスクを取り出しドライブに突っ込んだ。
『…それは?』
『お手製の解読プログラムだ。まぁ、見てな!俺の邪魔をする奴を捕まえてやる…!!』
彼の表情は、まるでゲームを楽しんでいるかのようだった。
そういえば以前ダンが言っていた。
“『ロイは優秀なSEだけど、警察のブラックリストにも名を連ねる犯罪者でもある』”
ハッキングをしながらニヤリッと口角を上げる彼を見て、右京はダンの言葉に妙に納得をしてしまった。
『見つけた…!…ん?なんだこれ…』
眉を寄せた彼に右京『どうした?』と問いかけた。
『いや、てっきり妨害プログラムかと思ってたんだが…これは違う。“木馬”だ。』
…はぁ?“木馬”?
首を傾げた彼にまたロイが説明を始めた。