とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
画面には幾つかのウィンドウが表示され、虎太郎の入力する文字が羅列されている。
『まずは即席で簡単なプログラムを構築して…DLしたファイルをクラッキングするじゃん?で、それに木馬を…』
既にリサには虎太郎が何を言っているのか解らない。
『…もういい。』
拗ねてデスクに突っ伏してしまった彼女を気にしつつも、手を止める訳にはいかない。
『リサ?』
『……なによ。』
『一段落したら相手してあげるから、ちょっと待っててね。』
『なっ!?…別に相手して欲しいなんて…!』
ガバッと頭を上げた彼女は彼の真剣な横顔にドキッとして目が放せなくなる。
いつもならリサを気遣ってニッコリと笑う彼が、それすら出来ないほど集中している姿は初めてだった。
『…意外と素敵じゃない…』
『ん?何か言った?』
『別に!…待ってるから早くしてよねー』
嘯く彼女に虎太郎は一瞬笑って『了解』と答えると、また作業に没頭した。
仕方なくリサはマウスを握ってみた。
…えっと、確かここを押して…これかな?
どうやら違うらしく、開いてしまったよく解らないテキストファイルを閉じる。