とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
虎太郎に教えて貰いたいが彼は忙しくキーボードを叩いていてとても話し掛けられる雰囲気ではない。
時折『なんだこれ…』とか『違うな…これは…』とか聞こえるから、多分作業はてこずっているのだろう。
リサは自力で何とかしようと、あちこちカチカチとクリックしてみた。
そして何かのプログラムファイルをクリックしたとき、突然画面が真っ暗になった。
『…あれ?…ねぇヒューガ。』
『…待って今忙しい…』
『で、でも!これっ!』
リサに揺さぶられ、虎太郎は少し面倒くさそうに『なに?』と視線を向けた。
リサの使っていたPCは真っ暗なチャット画面が立ち上がり、白字で一文だけが表示されている。
─Hello,Virtues.─
…“やぁ、力天使”?
『…なんだ、これ…』
一瞬、神に見つかったのかとも考えたが、だったら何故隣のPCにこんなコメントを送って来るのかが解らない。
虎太郎はリサのPCにコメントを返す。
…“君は何者?”
─翼を無くした天使…と言えば判るかな?
驚きで思考回路がショートしたように固まった。
リサは虎太郎の顔を不安そうに覗き込む。
だが、彼の表情はニヤリッと笑みを浮かべた予想外なものだった。
『…リサ…』
『な、なに!?』
『嬉しい誤算だよ。…これは多分右京だ!』