とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



アルテミスは大蛇に向かって『…姿を現せ…』と静かに呟いた。



そして彼の目の前に現れたのは青白い顔をしたバンパイアだった。



『…さすがに貴方の索敵網からは逃れられませんね…アルテミス様。』



『…バンパイアの長、“クドラク”よ。タイタンの狙いもベルセルクの子供か?』



『その質問には答える義理はありません。』



クドラクの言葉にアルテミスはフンッと鼻で笑った。



…なんと愚かな…



力の差は歴然としているのに、クドラクの敵意剥き出しの態度は愚かとしか言い様がなかった。



『退け。お前も命は惜しいだろう?』



あまり暴れ過ぎてもゼウスが後で何を言うか判らない。



アルテミスはジッとクドラクを見据え威圧する。



クドラクは天を仰ぐ様に視線を上に向け、ふぅ…と小さく息を吐いた。



そして軽く振り返って大蛇と化したコウモリに『…退け…』と命を下す。



それを見たアルテミスは一瞬意外そうな表情をした。



『妙に利口なクドラクだな。』



『ええ…“巻き添え”は御免ですから。』



そう言って姿を消したクドラクにアルテミスは首を傾げたが、その真意は解らなかった。



< 423 / 469 >

この作品をシェア

pagetop