とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
アルテミスは大蛇に向かって『…姿を現せ…』と静かに呟いた。
そして彼の目の前に現れたのは青白い顔をしたバンパイアだった。
『…さすがに貴方の索敵網からは逃れられませんね…アルテミス様。』
『…バンパイアの長、“クドラク”よ。タイタンの狙いもベルセルクの子供か?』
『その質問には答える義理はありません。』
クドラクの言葉にアルテミスはフンッと鼻で笑った。
…なんと愚かな…
力の差は歴然としているのに、クドラクの敵意剥き出しの態度は愚かとしか言い様がなかった。
『退け。お前も命は惜しいだろう?』
あまり暴れ過ぎてもゼウスが後で何を言うか判らない。
アルテミスはジッとクドラクを見据え威圧する。
クドラクは天を仰ぐ様に視線を上に向け、ふぅ…と小さく息を吐いた。
そして軽く振り返って大蛇と化したコウモリに『…退け…』と命を下す。
それを見たアルテミスは一瞬意外そうな表情をした。
『妙に利口なクドラクだな。』
『ええ…“巻き添え”は御免ですから。』
そう言って姿を消したクドラクにアルテミスは首を傾げたが、その真意は解らなかった。