とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
ケイは中庭をキョロキョロと見回し、その瞳を爛々と輝かせていた。
「真っ暗で何も見えないでしょ?…だから早く寝ようね~」
そう声を掛けてはみたが全く寝る気配がない。
父親譲りの夜型人間になったりしないだろうかと、忍は小さくため息をついた。
暫く庭をゆっくり歩きながら考える。
それは先刻の右京との会話で、あまりにも無責任な言葉にまた怒りが沸々と沸き始めた。
だが、腕の中の小さな存在が忍をジッと見つめている事に気付いて我に返る。
「…私も言い過ぎたかな…」
きっと傍に居て抱き締めてくれたなら、こんなにモヤモヤする事もなかったかもしれない。
そしてこのままではいけないと漠然と思った。
今までの遠距離恋愛とは訳が違う。
自分にとってケイだけではなく右京もかけがえのない存在なのだ。
「ねぇ、ケイ…パパの所に帰ろうか…」
ポツリと呟いた忍にケイは「あーあー」と興奮気味に声を上げる。
その愛らしさに目尻を下げたものの、さすがに抱きっぱなしで腕が痛い。
「…もう、いい加減寝ようよ、ケイ~」
思わずそう愚痴るがケイはお構い無しにもぞもぞと暴れていた。