とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
忍は縁側に腰掛けると膝の上にケイを降ろし、腕を伸ばして小さく白い息を吐いた。
まだ5㎏程しかないはずなのに、ケイの体重が重く感じるのが不思議だ。
忍は我が子を再び腕に抱き直すと、その背中をトントン…と軽く叩く。
…これで寝てくれなかったら諦めよう…
じゃないとこっちが持たない。
忍はもう一度小さくため息吐くと子守唄を口ずさむ。
ケイは 大きな翡翠色の瞳を輝かせ、しきりにあーあーと声をあげていた。
「どうしたの?何か見付けた?」
忍はケイが何に興味を持ったのか気になってその視線を追う。
そこには無数の輝く星々…。
「綺麗ね〜お星さまよ〜?」
冬の澄んだ空気に星の輝きは一層増して見えた。
「ホントに綺麗ね〜…」
白い息を吐きながら思わず呟く。
さっきまで暗闇だと思っていた辺りですら心なしか明るく感じた。
多分それは目が闇に慣れて来たせいかもしれない。
星空に小さな手を伸ばし、んーんーと唸るケイに忍はクスッと笑った。
「あれはオリオン座ね〜。…あれが北極星…そういえば月は何処かしら…」
ケイに語りかけながら忍は夜空をぐるりと見上げた。
不意に、またたく星と星の間に一瞬微かな煌めきが見えた気がして忍はジッと目を凝らした。
…何かしら…飛行機?
そして、忍が見上げていた夜空に思わず目を瞑るほど激しい光が放たれたのは数秒後だった。