とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~




アルテミスは何が起こったのか理解できなかった。




それはベルセルクの気配を追おうとした時の事だ。




身体を掠めた光線のせい身体の自由を奪われて暫し呆然となる。




丁度左腕を抉られたのだと気付いたのは裕に15秒ほどしてからだった。




『なっ!?…』




一体誰がどこから狙っていたというのか!?



これ程までの力が放たれていれば気付くはずである。




だがその気配はどこにもなかった。




あるとすれば、あのベルセルクの子供ぐらいだろうか。




『バカなッ!そんなはずはない!』




現に今もその気配は穏やかで、自分に敵意を向けている様子はない。




アルテミスは小さく舌打ちをして、ダラリと垂れ下がる左腕に右腕を当てるとすぐさま腕を再生する。




余計な力を消費したせいで彼の姿はもう隠しきれなかった。




それを待っていたかのように再び自分目掛けて光線が放たれ、それを間一髪受け止めた。




『な、なんなのだ!?一体誰の仕業…』



そう呟きかけて彼はハッとした。




…そうか、そういう事か…!



先程あのクドラクが言っていた“巻き添え”とはこの事だったのだ!



…クドラクは何故予期できたのだ!?



アルテミスは必死でクドラクの言葉を思い出す。




あの時彼は潔く引いた…まるで敵わないといった具合に天を仰いで…。




…天…?



クドラクがしていたようにアルテミスも天を仰ぐ。




『天から私を狙ったというのか!?』




神である自分を狙うなどという愚行が誰の仕業なのか、アルテミスには未だ理解出来なかった。









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