とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
◇
その輝きはまるで星の誕生の瞬間であるような、未だ嘗て見たことのない程激しい光だった。
忍はケイを腕に抱え込んで目を瞑ると、再び訪れた闇にゆっくり顔を上げた。
—キイイイイィィィン…‼
「な…何…耳鳴り⁉」
唖然と立ち尽くしていた彼女は突然脳が揺さぶられるような感覚に蹲った。
眩暈が酷くて身体が思うように動かない。
地面に膝を着き、気を抜けばケイを落としてしまいそうになる。
異常な事態はそれだけではおわらなかった。
ふと何かの気配を感じ、彼女は暗闇に視線を向ける。
…誰か居る…‼
先程の光のせいで辺りの景色はぼやけて見えなかったが、それだけは異様なほど鮮明に見えた。
暗闇にぼんやりと浮かび上がる、まるで満月のような淡い光る人影…
…い、いや…来ないでっ!
そう叫びたいのに声が出ない。
声どころか金縛りに遭ったように身体が動かなかった。