とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
ヒタヒタと近づくその目の前の光りに彼女はケイを抱く腕に力を込めた。
そしてただ浅く呼吸を繰り返す。
緊張で過呼吸気味な白い息がその人物の身体を掠めるほどの距離。
美しく輝きを放ち、真っ直ぐ忍を射るような眼差しに彼女は背筋が凍り付く。
…たすけて右京…!
忍の恐怖心を感じ取ったのか、腕の中のケイが突然泣き出した。
「わあぁぁぁん!うわぁぁぁん…!」
忍に向けられていた視線がケイへと移動し、ゆっくりと腕が伸びてくる。
「…あ……あ……あ……」
ケイが忍の腕を離れ、光へと引き寄せられて行く。
叫ぶ事も許されず、抗う術もない忍は涙で歪んだ光景をただ見ているしか出来なかった。
泣き叫ぶケイの周りでビリビリと何が光る。
…っ?!…なに…!?
ほんの一瞬、見開いたケイの瞳が紅く…燃える様に紅く輝いた。
ーバチ…バチバチッ…!
ふと身体の拘束が解け、忍は地面に手を着きフラつきながら立ち上がった。
「…忍さま!!」
「潤くん…?!ケイがっ…!放して!」
肩を抱くように支える潤の腕でもがく忍に彼が「駄目ですっ!!」と声色を強めた。