とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
神々しい輝きを放つその人物を前にルークは内心舌打ちをする。
…アルテミス…
力の差は歴然だった。
いくら彼が傷を負っているとしても、下級悪魔の1体や2体を消すなど、造作も無いだろう。
…ガ、足止メ位ハ出来ルッ!
ルークは地面を這う影を操り、アルテミスを包囲した。
それは渦を創り、アルテミスの光を取り囲む。
『…無駄な事を…』
それまで黙っていたアルテミスがポツリと呟いた。
『…何故無駄な事をするのだ、クー•シー…お前は我に勝てぬぞ?』
…確カニソウカモシレヌ…
ルークはアルテミスを睨みながら一歩下がる。
…ダガ、無駄デハナイッ!
急速に影が渦を狭め、アルテミスを締め付けて行く。
彼は溜息に似た乾いた笑みとともに影を弾き飛ばした。
その瞬間またバチバチと辺りを稲妻が走り、アルテミスが一瞬動きを止めた…その時だった。
天空から一筋の光線が差し、アルテミスの身体を貫いた!
物凄い衝撃波に潤に抱きかかえられていた忍も目を瞑る。
驚き目を見開いたアルテミスの瞳が『何故…ッ⁉』と問う。
そして消えゆく彼にルークは答えた。
…人間ノ力ヲ甘ク見タナ…アルテミス…
その一撃が衛星からの攻撃であった事を彼は知る由もなかった。