とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
右京の膝の上でケイが愚図り出し、話を中断して忍へケイを渡した。
その様子を眺めながら潤は静かに口を開く。
「では…あの時の稲妻は右京様ではないのですね…」
「稲妻?」
「はい。月神アルテミスが時空を一時的に歪めた時、一種の結界が張られたんです。お陰で忍様の危機を察知出来なかった…」
その結界が解けて潤が駆けつけた時、アルテミスを牽制するように辺りを稲妻が走っていたのだ。
「右京じゃないなら、虎太郎君かしら…」
ヨシヨシとケイをあやしやがら忍が呟く。
「いや、遠隔攻撃なんて出来ないだろ…それが出来てたら衛星なんてハッキングしないさ。」
「右京じゃない、虎太郎君じゃない、潤君じゃないって…あの時他に居たのは…まさかルーク!?」
忍の言葉にルークはピクリと耳を動かして顔を上げた。
ー…我モ結界デ動ケナカッタ
「だろうな。まぁ、そうじゃないかと思ってたけど、やっぱりか…」
「ええ…正直驚きました。」
右京と潤の会話に理解出来ない忍はしきりに首を捻る。
「ねぇ、誰の事を言ってるの?」
そんな彼女の問いかけに右京と潤は顔を見合わせた。