とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
右京は一拍置いてゆっくりと口を開く。
「…本当にわからないの?」
「だから聞いてるんじゃない!…ねぇ、誰なの?」
「誰って…ケイしか居ないじゃないか。」
「まさかっ!」と吹き出した忍だったが、二人の顔を見て冗談を言っている訳ではないと気付くと言葉を詰まらせた。
「俺はね、ケイの事を心配なんてしてないんだ。心配なのは忍の方!」
「…私?」
「ケイは俺の血を引いてる。まして覚醒してるんなら潤なんかよりも力はあるだろうと思うんだよ。」
「でも…」と何かを言いかけた忍の腕からケイを抱き上げ高い高いをしてやると、ケイは楽しげに笑い声をあげた。
「確かにケイはまだ赤ん坊だし、忍が過保護にするのも判る。…判るんだけど、こいつの能力を忍は理解してない。」
そう言われて忍はあの夜の出来事を思い出す。
あの時のケイの瞳は…。
「…紅く光ってた…」
「え?なにが?」
「ケイの目よ!…一瞬紅く光ったのよ。まるで…右京みたいに…」
動揺気味の忍をよそに右京は「へぇ!」と感嘆の声を漏らす。
「凄いじゃないかケイ!チビのくせにやるなぁ!」
「ちょっ…!そんな呑気な…!」
「なぁ、忍…」
右京はケイを見つめて微笑みながら忍に語りかける。