とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「ケイなら大丈夫だ。もっと肩の力を抜けよ。」
そう言われてハッとする。
母にならなくてはという自己観念はケイに対して過剰になっていたかもしれない。
「俺だって居るし、潤だってルークだって居る。少し任せて一人で無理するのはやめてくれ…」
「無理なんて…」
してないと言い切れない忍が語尾を濁す。
右京は俯く忍の頭をクシャリと撫でると優しいいつもの笑みを浮かべた。
潤も「そうですね…」と右京の言葉に頷く。
「ワタクシも右京様のその意見には賛成です。…ですが、右京様は放任し過ぎです。」
「え…俺?」
「そうです。だから忍様がケイ様に過剰になるのです。人の事を言う前にご自分の行いを改めー…」
「わ、わかったわかった!気を付けるから!…ってなんでお前そんな偉そうなんだ?」
そんなやり取りに忍はクスクスと笑う。
忍は別に右京が放任だとは思っていなかったが、そばに居てくれたらと思った事は何度もあった。
実家に居れば両親が助けてくれるが、やはり右京でなくては意味がない。
「右京。いつイギリスに帰るの?」
「ん?出来るだけ早く…かな?」
「私達も一緒に帰るわ…やっぱり右京のそばがいいもの。」
「ん。そのつもり!…実はさ、休暇全部使い果たしてて、仮病使ってんだ。」
呆れてポカンと口を開ける忍に右京はサラッとあり得ない事実を口にしたのだった。