とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
アスタロトが現れた事は主であるルキフゲには報告済みである。
ー…別に自分は咎められる様な事はしていない。
だが威圧的なルシファーの視線を受け、それが本当に正しいのかさえ疑わしく思た。
『アスタロトの行動は些か出過ぎだった。…そう思わぬか?』
『…あくまでも私個人の意見ですが…アスタロト様の場合は何やら私情が絡んでいた様でした。はっきり申し上げるなら、その様な行動は慎んで頂かないと今後の志気に影響し兼ねません。』
淡々とした口調で言うマルバスにルシファーは一瞬呆気に取られたようだが、ゲラゲラと笑い出した。
『マルバス!お前、言うようになったな!行動を慎めと…?ハッハッハッ!』
マルバスが『失言でした。』と付け加えると、彼は含み笑いをしながら『気にするな』と立ち上がった。
『引き続き監視役を命じる。』
そしてマルバスのそばを通る時、その足を止めて肩をポンと叩かれた。
強張る彼にルシファーは『期待してる』と囁くとコツコツと足音を響かせて部屋を出て行った。
マルバスは一気に脱力し、額を流れる汗を拭う。
彼にはルシファーが一体何を考えているのか、理解出来なかった。
ー…だが…期待を裏切る訳にはいかない。
それだけは確かだった。