とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
◇当時シンディはまだ高校生だった。
姉のソフィアは一つ年上で、地元では知らない人が居ないくらい美人で有名だった。
そんなソフィアがモデルの仕事を始めた時、シンディは素直に嬉しかった。
彼女から見ても姉のソフィアは美しく妹思いの自慢の姉だった。
ソフィアが家を出てからも仲は良く、暇を見つけてはよくショッピングをしたり長電話をすることも多かった。
『実はね、シンディ。私、好きな人が居るの。』
そう告白されたのはシンディが高校を卒業してしばらくした頃だった。
幸せそうに微笑みながら彼について話すソフィアを見て、シンディは自分の事のように喜んだ。
『ソフィーの好きな人ってどんな人?』
『とても素敵な人よ。デザイナーをしてるんだけど…そうだ!来月新作発表があるから見に来て!』
ソフィアもそのファッションショーに出るというのもあり、シンディは姉に『もちろん!』と即答した。
その頃のシンディは美術大学に通っていて丁度課題で忙しく、ソフィアと連絡が取れなかった。
やっと落ち着いて連絡をしたのは、ソフィアが言っていたファッションショーの数日前だった。
『いよいよ明日ね!友人と一緒に見に行くから!』
『ええ…ありがとう…』
後から考えてみるとその時のソフィアは元気がなかったような気がする。
だが、ショーが近くてナーバスになっているのだろうと、シンディはあまり気にしていなかった。
新作発表当日、シンディは友人と会場へと向かう為地下鉄に乗り込んだ。
『ねぇ、知ってる?あのデザイナーの話!』
『なになに?』
『この前ゴシップ誌に載ったのよ、彼が!なんでもかなりのプレイボーイだとかで…』
初めて聞く話にシンディは嫌な予感がした。
友人の話だとモデルを次々手にかけて、飽きたらお払い箱なんていうのはザラだとか。
『で、その中のモデルが最近自殺したらしいのよ。』
『ええっ⁉︎…それ本当なの?』
『らしいわよ?遺書があったって記事には書いてあったし。』
確かに今売れ出しているデザイナーだと大学でも聞いた事があり、ファッション雑誌で見かけた彼はなかなかのハンサムだった。
ただ、この手のゴシップネタは業界ではよくあるし、イマイチ信憑性に欠けるものが多い。
『ゴシップ誌って同じような話多いし、どこまでが本当かわからないけどね。でも彼がプレイボーイだっていうのは本当みたい。』
友人の話が本当だとしたら、ソフィアは今どんな気持ちでいるのだろうか。
そう考えるとシンディは彼女が心配で仕方なかった。