とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~

会場には人がひしめき合い、最前列にはかなりのマスコミの姿も見えた。



友人が言っていた例のゴシップ誌のせいかもしれない。



ショーが始まってすぐにシンディはそれがゴシップのせいだけではない事に気付いた。



と言うのも、彼のデザイナーとしての素質とこだわりが感じられる作品の数々を目の当たりにしたからだ。



それは間違いなくプロの成せる技…



シンディは華やかなに着飾り、颯爽とキャットウォークを歩くモデル達に釘付けとなった。



『…素敵…』



そう呟く友人の声にシンディも頷く。



デザインの素晴らしさはもちろんだが、やはりモデルがその良さを引き立たせているのだ。



そして一際ゴージャスなドレスを着て登場した人物は紛れもなく自分の姉であるソフィアだった。


言わずとも今回の花形である事に会場の誰もが気付いたようだ。



あちこちから感嘆の声が聞こえる。



『なんて綺麗なの…』




一瞬で会場の誰しもを魅了する姉。



シンディは彼女を心から素晴らしいと思った。



“姉はきっと大スターになるわ…!”



そう思っていたあの頃から何が狂い始めていたのかもしれない。



後悔とは失って始めて気付く事だと知った…。



シンディは記憶にあの華やかだった姉の姿を胸に焼き付ける。



そうして姉は命日にはその姿だけを思い出そうとするのに、決まって一緒に悪夢が蘇るのだ。



姉の生命を奪い、夢を奪い、未来を奪ったあの悪夢を…。






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