とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~

だが、実際はそうではなかったとアランは言う。



『確かにあのデザイナーは女癖が悪いともっぱらの噂だった。けど、シンディの姉…ソフィアが変死体になったのとは殆ど関係がないんだよ。』



『…というと?』



『デザイナーはイギリス在住。ソフィアは当時フランスに住んでた。つまり、直接手は下せない。それにシンディの話だと、彼等の関係はソフィアがフランスへ渡る少し前に終わってたんだ。』



マスコミはソフィアの不可解な死を悲惨な恋の結末として仕立て上げた。



そして、それを誰も疑う事が無かった…シンディを除いては。



『シンディが不審に思ったのには理由があったんだろ?』



『ああ。これだよ。』



そう言って虎太郎は一冊の分厚い本を開いた。




そこに描かれていたのは海竜のような生き物。




確か、“嫉妬”の悪魔…



『…“リヴァイアサン”…⁉︎…まさかっ』



『まだソフィアがイギリスに居た頃は普通だったらしい。恋人だったデザイナーを振ったのも彼女だったみたいだし、別に傷心していたわけじゃない。』



淡々と語るアランに右京は黙って耳を傾ける。



『シンディが、彼女がおかしいと気付いたのはフランスのオルレアンに行ってからだ。』



ソフィアとはたまに連絡を取り合っては居たが、会話の中で以前のような明るさが徐々に薄れていくのをシンディは感じていた。



『最初は引越したばかりで疲れているだけだと思っていたらしいが、その変貌ぶりが尋常じゃなくてね…僕に相談して来たという訳だ。』




ソフィアはやたらとモデル仲間を卑下するようになり、在らぬ妄想をするようになった。



“姉が何かに取り憑かれているかも”



シンディの話を聞きながらアランはとある都市伝説を思い出した。





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