とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
生い立ちはどうであれ、能力があるだけで普通の子供となんら変わりはない。
『破門になったのが20年ほど前の話だが、フランスのオルレアンに住むユダヤ系牧師に引き取られたって話だ。』
アランは『なるほど…』と呟くといつもの台詞を口にする。
『ではオルレアンに行って来てもらおうか。』
…出た…!
右京は露骨に嫌な顔をしてアランを睨む。
そんな右京に彼は小さくため息を吐くとクリスに視線を向けた。
『クリス。今回は君に頼むよ。』
もし元ハンターが絡んでいた場合も考慮に入れたらそれが妥当だろうと彼は考えた。
『不測の事態になった時は特攻を投入する。それに…』
『…それに?』
『いや…まぁ、そういう事だ。』
そう言ってアランはクスっと笑った。
その不敵な笑みに右京はまたもや嫌な顔をして呟く。
『…完全に面白がってる…』
『…勘弁してくれ…』
軽く項垂れるクリスを見て虎太郎だけが状況を理解出来ず首を傾げた。
『なになに?なんなの?』
『お前は相変わらずだな…。その方が都合のいいだろ?』
『何が?』
『だから、シンディだよ!彼女はきっと…』
とそこまで言うと思いっきりクリスの鉄槌を喰らい右京は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
そんなやり取りを見ても虎太郎は全く理解出来ないのだった。