とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~

…“孤独死”…


姉の死はシンディにとって信じがたい出来事だった。


だが、信じがたいのは単なる孤独死ではなかったからだ。



『…死因は“溺死”だったの…』



まるで囁くような彼女の声にロイは眉を寄せる。


『溺死?…それは間違いないのか?』


『検死結果ではそうなっていたわ。肺に溜まった水はオルレアン地方の水質と一致していた事までは判ったんだけど、警察もそれ以上は何も…』



当時警察は事件性が高いと見ていたが、恋人もいる訳でもなく親しい友人と呼べる様な人物も捜査線上に上がって来なかった。



そして数ヶ月後には捜査が打ち切られ、お蔵入りになってしまった。



親族である両親は諦めてしまったが、シンディだけはどうしても納得がいかなかった。


…ソフィアに限って絶対にあり得ない!



そう刑事に詰め寄ってはみたが、全く取り合ってもらえなかった。


『死因の溺死は?説明が着かないだろ?』


『ええ。事故の方面からも捜査してたみたいだけど、結論を出さなかったとこをみると、“そうと言えない”って事だと思うわ』


シンディは溜息混じりに言うと、アイスティーのストローをクルクルと回す。



そんな彼女の様子を見ていたロイは『なるほどね』と言いながら森の方に目を向け暫し考える。



仮にソフィアが別の溺死するような場所で殺害されてから遺体を動かしたとするならば、一体誰が何の為にと言う問題が出てくる。


しかし、ろくに親しい知り合いも居ない異国の地でわざわざ彼女のアパートまで運ぶ事の出来る人物は殆ど居ない。


つまり、シンディはこの不可解な姉の死はあの森が関係していると考えているのだ。
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