とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
直接自分達に接触して来ないのが気になるが、右京に危害を加えるつもりではないだろう。
「田所さん…彼女は何か言ってましたか?」
「さぁ…特には…」
右京は顎に手を当て、少し考える仕草をしてフラリと立ち上がった。
そして携帯を取り出すと何処かに電話を掛けた。
『…俺だけど…アランは居る?…じゃあ、後で連絡をくれって伝えて。』
心配そうに見上げる忍の頬を撫で、田所に向き直った。
「田所さん。彼女から出来るだけ目を離さないで。…多分、暗示が掛かってる。」
「…“暗示”?」
そう問いかけた時、右京の携帯が鳴った。
『悪いな、ちょっと聞きたいんだけど、“アレ”は何処に仕掛けた?…そう。…は?ジッポ!?…判った。』
早々に携帯を切ると彼はポケットからジッポを取り出し、カバーを外した。
「…あの野郎…絶対いつかしばいてやる…」
ブツブツと呟くと右京は小さなチップの様な物を取り出し、田所に渡した。