とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



右京はアスタロトの髪を掴むとグイッと乱暴に自分の方に向かせた。



「…お、おい…」



「大丈夫、大丈夫…こいつ“ドM”だから。」



………はぁ?ドM?



よく判らない理屈で「大丈夫」と言う彼に、田所は「お前の頭は大丈夫か!?」と聞きたかった。



「誰の指示だ?」



「…個人的な事よ…指示なんて受けてない。」



「嘘をつくな。」



「ほ、本当よ!…あの女…貴方の子供を身籠ったらしいじゃない…」



それを聞いて右京は「なるほど…」と頷く。



「狙いは“忍”か。」



だからアスタロトは右京に接触して来なかったのだ。



微かな呻き声が聞こえて右京と田所は振り返った。



その一瞬の隙をついてアスタロトは右京の腕を振り払うと、風を巻き上げてスッ…と消えた。




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