とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~



…逃げたか…。



だが、あれでアスタロトが諦めるとは思えなかった。



おそらくまた来る…忍を狙って…。



「…私…なんでここに?」



目を覚ましたしのぶを田所は抱き起こした。



「何も覚えてないか?」



「えぇ…。…黒崎…様?」



しのぶは右京を見て立ち上がろうとして頭を押さえた。



「無理しなくていいよ。」



そう微笑む彼の瞳はいつもの綺麗なグリーンだった。



田所は不思議そうに右京を眺め、突然聞こえた携帯の着信音で我に返る。



「田所です…はい、判りました…すぐ行きます。」



そう言って電話を切ると右京に目を向けた。



「…彼女をお願いしてもいいですか?…ゲストが到着したらしいので。」



「…ゲスト…?」



一瞬眉を上げて怪訝そうにしたが、「いいよ」と言うと田所はしのぶに「後で迎えに行く」と言って去って行った。

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