とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「…まさか歩いて行く気?」
「うん…?だって、たかが2kmくらいでしょ?」
「階段でコケたらどーすんの!?」
「…そんな事言ったら生活出来ないじゃない…」
それでも心配性の右京は全く折れず、さっきから数メートルしか進んでいない。
…駄目だ…このままだと日が暮れるわ…。
結局忍が折れてタクシーで移動する。
宿泊先に着くまで右京の説教が続いたのは言うまでもない。
…この男…小姑並みね。
「…黙ってれば“格好良くて優しい旦那さん”なのにね…」
思わずポロリと溢れた本音に右京はムッと口を尖らせる。
拗ねたようにそっぽを向く右京を忍は覗き込む。
「…怒った?」
「怒った。」
素直に答える自分の旦那が可愛いくて、クスクスと笑うと彼にピッタリとくっつく。
右京はチラッと彼女を見てから、耳元に顔を近付け囁いた。
「…でも…大好き。」