とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「…もしかしたら、もっと複雑かもしれません。」
潤はトレイにケーキ乗せている忍を眺めながらポツリと溢す。
「例えば…忍様のお腹の子が彼等の狙いだったら…」
「まさか…!」
「可能性がないとは言えないでしょう?なんたってベルセルクの子供ですから…」
右京は何も言い返せなかった。
…“ベルセルクの子供”…。
自分の思い描く幸せな未来への道のりは…意外と険しい。
潤は「全身全霊で御守りします」と言って消えた。
トレイいっぱいにケーキを乗せた忍は「好きなのどーぞ」と言って微笑んだ。
右京は彼女の手からトレイを取り上げ、腰を引き寄せる。
びっくりしたような彼女のこめかみにキスをして囁く。
「じゃあ、これをもらおうか。」
近くを通り掛かったウェイターにトレイを渡すと、忍の手を引いて会場を出た。