とある堕天使のモノガタリⅤ ~TRINITAS~




最近少し身体が重く、疲れやすくなった気がする。



チェックインをした後、ホテルを散策していた忍が「ふぅ…」と息を着くと、隣の右京が「少し休もう」と中庭のベンチに彼女を座らせた。



夕焼けに染まる京の都に忍が「キレイ…」と呟いた。



その景色はずっと変わらずそこにあって、昔の人達もこうやって見ていたのだろうか。



中学時代に来た修学旅行の思い出の中に、一つだけ忘れたくても忘れられないものがあった。



忍はそれを誰にも話した事が無かった。



「…あのね、右京…」



「ん~?」



「私…中学の時からずっと右京が好きだった。…でもイトコだし、気持ちを隠してた。」



右京は忍の話を黙って聞きながら彼女を軽く抱き寄せる。



「…一度だけ…右京を諦める為にって男の子と付き合った事があるの。」



それはほんの数週間だったが、今でもその時の記憶がモヤモヤとして頭の隅から離れなかった。




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