とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
当時忍は“付き合う”ということをちゃんと理解していなかった。
ただ手を繋いだり、デートしたり…そんなもんだと思っていた。
「…修学旅行の時、初めてキスされて…その子が“男”なんだって理解したの。」
ファーストキスは甘酸っぱい思い出なんかじゃなく、ただ苦いだけ…。
右京は無表情のまま小さく呟く。
「…アイツにキスされたんだ…」
忍はそれを聞いて「えっ…?」と顔を上げた。
「…知ってたよ…忍が付き合ってた事。」
「うそ…!?」
「ホント。多分、その少し後だったかなぁ…家の前にソイツが居てさ。“忍を呼んできて”って言われた事あるし。」
初めて聞く話に唖然とする忍に、右京は優しく笑った。