とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
携帯から聞こえて来た『よぉ!』という声にニックは首を捻る。
『…お前、新郎じゃないのか?』
『なんだ、開口一番…。結婚式ならもうとっくに終わってるよ。』
『そうなのか…てっきり花嫁に逃げられたのかと思ったぜ。』
『お前じゃあるまいし、んな事あるわけねぇだろ…』
呆れたような口調の右京に弁解をしようと口を開いた時、『ちょっと頼みがある』という彼の言葉に遮られた。
『調べて欲しい事があるんだ。』
どうせ暇だろ?とでも言いたげな言いっぷりに、ニックは反論しようとして止めた。
『…何を調べるんだ?』
『“黒魔術”だよ。』
『……はぁ?』
自分の考えが正しければ、彼等は今ハネムーンの真っ最中のはずだ。
それが何故今“黒魔術”について知りたいというのか…。