とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
黒だろうが白だろうが、一般的にはどちらも同じ魔術に変わりはない。
その定義は、意志に応じて変化を生ぜしめる学にして術である。
つまり、黒魔術であるなら必ず“術”が存在するはずだとニックは考えた。
『魔方陣の類いが絶対近くにあるはずだ。』
『いや、部屋なら捜索済みだけど、それらしいものは無かった。』
『本当に見落としはないか?見えない所に配置されてるかもしれない。』
『見えない所っつても…』
そこまで言って右京は『待てよ…』と人差し指をこめかみに当てる。
…目に見えない…魔方陣…。
『もしかしたら…配置かもしれない…』
『なんの?』
『花瓶だよ。』
その配置で魔方陣を形成していたとしたら…。
右京はラップトップPCを開き、ホテルの見取図と花瓶の位置を確認してみた。