とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
バクバクと煩い心臓の音が相手に聞こえるのではと心配になる。
「沖田さんって…俺の事嫌いでしょ?」
「えっ!?そんな…!嫌いじゃないですよ!」
嫌いではないが、しのぶは彼が苦手だった。
田所でイケメンには免疫があるはずなのに、この“黒崎右京”という男は別格だと思う。
「そう?なら良かった。」
沈黙が訪れ、非常に気まずい。
しのぶはこの気まずさを打破しようと無理矢理会話を探す。
「お、奥様は一緒ではないのですか?」
「あぁ、夜に備えて休むって。」
「えっ!?…あ、あぁ、そうですか…」
…ヤバい!墓穴掘った!
夜に備える理由を想像してしまい、顔が一気に熱くなる。
「ぷっ…やだなぁ~変な意味じゃないよ?彼女、“vale”のファンなんだよ。」
「あ、…そうでしたか…ごめんなさい!」
真っ赤になって頭を下げるしのぶに右京はゲラゲラと笑っていた。