とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
部屋の造りは彼等の部屋である710と大差ない。
違いと言えばスイートかツインかという点と、間取りが対称というだけだった。
「…違うな…。次の部屋、見せてくれる?」
「はぁ…」
右京は部屋をチェックするでもなく、ざっと見渡しただけだった。
807の施錠を外し、先程同様に彼を促す。
そしてまた、右京は「違う」と呟いた。
…何が違うのか…。
気になって「あの…」と開き掛けた口を接ぐむ。
田所から「絶対に理由を聞くな」と言われた事を思い出したからだ。
なんとなく自分が田所の言いなりな気がして面白くないが、彼がこれで納得してくれればお役御免である。
が、右京の言葉にしのぶは唖然とする。
「じゃ、次の部屋に移ろう。」
「……あの、どの部屋を言ってるんですか?」
「このホテルの他の空き部屋だよ。」
涼しい顔をしてサラッと言い放つ右京に、思わずしのぶはひきつった笑みを浮かべた。