とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
「…で?何が大変だったって?」
「黒崎様よ!」
「おい…!声がでかい!」
彼はしのぶの腕を掴んで自分の隣に座らせ、シィーと長い人差し指を突き立てた。
「…ただ空き部屋を案内しただけだろ?」
「ええ、そうよ。このホテルの空き部屋全部ですけど!」
「……あぁ…そう…」
しのぶが怒るのも無理ない。
田所が「悪かった」と素直に謝るものだから、彼女はそれ以上文句が言えなくなった。
「…あの人…何者!?」
「さぁ…でもカタギには見えなくないか?」
「…まさか…ヤクザなんて言わないわよね?」
「イギリス暮らしらしいし…マフィアか…最悪、テロリストかも…」
しのぶの冗談に田所が真顔で答えたので、彼女はぷっと噴き出した。