とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
笑うなと口を尖らせた田所にしのぶは必死に笑いをこらえる。
「お前見たか?黒崎様の腕!でかい刺青があるんだ。」
「そんなの“vale”のアダムにだってあるじゃない…」
確かにそっくりなタトゥーがアダムにもあった。
「…ただのファンか?」
「そうかも!だからVIPルームも見たかったのね。」
「なるほど…って、11階も行ったのか!?」
「し、仕方がないじゃない!…あのグリーンアイで見つめられたら…無理なんて言えなかったのよ!」
頬を染めて言い訳をするしのぶに田所は苛立ちを隠せなかった。
…相手は既婚者だっていうのに…何赤くなってんだよ!
言葉にすらしなかったが、不機嫌な彼を見てしのぶは悪戯に笑う。
「なに~?ヤキモチ~?」
「そ、そんなんじゃねぇよ…」
「…そうよね…そんな関係じゃないものね…」
彼女は小さく呟き立ち上がった。
だが田所はしのぶを追うことが出来なかった。