とある堕天使のモノガタリⅤ
~TRINITAS~
忍の話を聞いて潤は多少の疑問を感じた。
まず、忍とアスタロトは接触していないのに、何故彼女は“心の中をいじられている”と感じたのか?
…“遠隔操作”?…あり得ない。
接触せずに思考に侵入は不可能に近い。
寝ている間に接触すれば可能かもしれないが、本当に彼女が危機を感じれば右京が居なくても自分が召喚される。
「おそらく“錯覚”でしょう…」
「“錯覚”?…やっぱり思い過ごしって事?」
「いえ、違います。わざと“錯覚”をさせているんです。」
「どうして?やり方が回りくどい気がしない?」
…確かに回りくどいが、忍様の不安がお腹の子にも伝導すれば…
潤はやっとアスタロトの狙いに気付いた。
…右京様…!早くしないと手遅れになります…!
グッとカップを握りしめる潤を忍が心配そうに見つめる。
潤は不安を悟られまいと、いつもの様に「大丈夫ですよ」と笑みを浮かべた。
「右京様はあれでも頼りになる方です。」
忍も「そうよね」と笑ってそっとお腹をさすった。