君へ、約束の歌を。<実話元>
…その曲に被さるのは、
「…祐〜〜っ!!
なんで…なんでっ…!!」
耳を塞ぎたくなるような、
家族の悲痛な叫び。
胸を引き裂かれるかのような、苦しみ。
「アゲハ蝶」とその声は重なって…
私の記憶に刻み込まれた。
私は…
その曲を、封印した。
聞くと、この時の光景が頭に浮かんできてしまうから。
…ゆっくりと目の前を運ばれて行く棺。
…祐ちゃんの名前を何度も何度も繰り返し呼ぶ、家族の悲しみに満ちた声。
胸を突き上げてくる、
とてつもなく大きな痛み――…
もう「アゲハ蝶」は、
聞きたくない。
…聞けない。
祐ちゃんとよく歌ってた曲、
私が今まで好きだった歌の一つが、この日をきっかけに、聞くと涙が出る悲しい思い出の曲になった。
『ばいばい、祐ちゃん…
今まで、ありがとう…』
心の中でそっと祐ちゃんに別れを告げる。